「ヤナセもの」は本当に良いのか?【空冷ワーゲン専門店の本音と注意点】

ゴートブロスの八木です。
空冷ワーゲンのオーナー様はもちろん、新規に問い合わせをいただくお客様からも、「ヤナセもののワーゲンは良いのですか?」というご質問をよくいただきます。
正規ディーラーであったヤナセが扱った個体は、素性が分かりやすいという点で、確かに一つの大切な指標と言えます。
しかし、当社では、その経歴以上に「今、その車がどのような状態にあるか」という本質的な価値を何よりも重視しています。なので、結論から申し上げますと、「ただのヤナセものである」というだけでは、当社が考える「ワーゲン」の価値には繋がらないのです。
以下に、当社の「ヤナセもの」に対する見解を述べさせていただきます。
1. 「ヤナセもの」が持つ、揺るぎない信頼性の根拠
まず、ヤナセの歴史を振り返ってみましょう。株式会社ヤナセは、1953年(昭和28年)からフォルクスワーゲンの正規輸入代理店としてビートルの輸入・販売を開始。1992年に一度その役割を終えるまで、長きにわたり日本市場への供給とアフターサービスを担ってきました。
この「ヤナセが扱った正規ディーラー車である」という事実こそが、「ヤナセもの」の価値を支える最大のポイントです。並行輸入車とは異なり、新車として日本に正規輸入され、ヤナセの手で販売・整備されてきたという来歴は、素性の確かさ、ひいては高い安心感に繋がってきます。
2. 日本市場に合わせた仕様と、その希少価値
ヤナセが輸入したビートルには、当時の日本の保安基準や市場のニーズに合わせた独自の仕様が見られます。例えば、販売当初からの右ハンドル仕様や、ナショナル製AMラジオの純正装着、一部モデルへのクーラーの後付けなどが挙げられます。
こうした「日本の環境に合わせた」仕様が多いことも、「ヤナセもの」が持つ安心感と信頼感の源と言えるでしょう。
3. なぜ「ヤナセもの」というだけでは危険なのか?
では、先に述べたように、なぜ「ヤナセもの」というだけでは価値があると言い切れないのでしょうか。
それは、現在市場に出回っている空冷ワーゲンの多くが、ヤナセの手を離れてから数十年という長い時間が経過しているからです。ヤナセが空冷ビートルの正規輸入を終了してから30年以上が経過し、その間の整備履歴が不明な車両が増えているのが現状です。
たとえ30年前までヤナセで万全な整備が行われていたとしても、その後のメンテナンスが不十分な空冷ワーゲンは、ほぼ間違いなく不調をきたします。これが高額な修理費や維持費に繋がるケースも少なくありません。
また、ヤナセの手を離れてからの経歴が、意図的に伏せられているケースも少なくありません。例えば、整備内容に自信がないなどの理由で、特定の整備工場への入庫記録を残さないといったケースです。2025年現在、「ヤナセもの」であっても過去数十年の整備記録が不明な車両は、非常に大きなリスクを抱えていると断言できます。
4. 真の価値は「誰が」ではなく「何が行われてきたか」
これは「ヤナセもの」に限った話ではありません。「某有名ショップで整備されていた」「伝説的なメカニックが組んだエンジンだ」という話もよく耳にしますが、それだけでは現代において車両の価値を保証するものにはならない、と当社では考えています。
空冷ワーゲンのような旧車では、「誰が」「どこで」整備したか以上に、「これまで、どのような整備が、いつ行われたのか」が記録として明確であることが、何よりも重要です。
極端な例かもしれませんが、「ヤナセもの」であり、かつ新車登録時から今日に至るまでの全整備履歴や歴代オーナーの経歴がすべて判明しているような車両であれば、その事実だけで数百万円の付加価値があるとさえ言えるでしょう。
もちろんこれは当社で組み上げた車両も同様であると考えていて、例えば「ゴートブロス」で組み上げられたという事実を持つエンジンに「実施した詳細なメニュー」などの記載がない場合、仮に他社様で査定いただくと価値のないものと判断されてしまうと思います。
そのために、というわけではないのですが当社で実施させていただいたメニューについては整備内容や価格などしっかりとお伝えさせていただきます。
お手持ちの空冷ワーゲンの価値について、またはご購入に関するお悩みなどございましたら、ぜひお気軽にゴートブロスまでお問い合わせください!
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Mail:info@goatbros.com

ヤマハにて3年の間、高性能乗用車エンジンの組み立てという精密かつ責任ある業務に携わり、自動車のエンジン技術の深い知識と実践的な経験を培う。その後、民間工場での自動車全般の整備経験を経て独立。プロショップ「GOATBROS」を立ち上げ、以後13年間空冷フォルクスワーゲンの中心としたクラシックカーの専門整備、固定概念にとらわれない”こだわり”を形にする車づくりに情熱を注いでいる。過去のエンジン組み立て経験を活かして、現在は空冷フォルクスワーゲンのエンジンオーバーホールや部品を1から作るレストア、旧車の整備知識を活かしたネオクラシックカーの整備なども得意としている。
●所有資格
「国家資格二級2輪自動車整備士」「古物商許可証」「陸運局認証工場静第8231号」「有償運行事業許可 静運輸第419号」